朝晩がひんやりしてくると、家庭の血圧計でいつもより高い数値が出ることがあります。寒さで血管が縮むことは、血圧が上がる要因の一つです。秋から冬にかけては、家での血圧を同じ条件で測り、変化を記録しておきましょう。 [11] 高血圧は、自覚症状がなくても続いていることがあります。健診で血圧を指摘された方も、治療中の方も、一度の数値だけで判断せず、家庭での記録を診察に役立てることが大切です。この記事では、血圧計の選び方から、朝晩の測り方、受診の目安までをご紹介します。 [2] [10] この記事のポイント 上腕式の血圧計を使い、朝と夜に座って落ち着いてから測る [2] 1回の機会に原則2回測り、両方の値と平均を残す [1] [2] 高血圧の診断に使う基準と、治療で目指す目標値を区別する [5] [6] 急な胸の痛み、息苦しさ、片側の手足の動かしにくさなどがあれば、血圧の数値にかかわらず119番へ [8] 寒くなると血圧が上がりやすいのはなぜ? 寒い場所では血管が収縮し、血圧が上がりやすくなります。血圧には季節による変動もあり、一般に冬は夏より高くなります。暖かい居間から冷えた廊下やトイレへ移動するときなど、急な温度差にも注意が必要です。 [1] [11] ただし、血圧が上がった理由を寒さだけで説明できるとは限りません。食事、運動、睡眠、緊張、体調などでも数値は変わります。「寒い日だけ高いのか」「朝の高い日が続いているのか」が分かる記録を残すと、診察で相談しやすくなります。 [1] 研究では、冬と夏でどのくらい違う? 国内のJ-HOP研究では、冬に測ったグループの朝に家庭で測る「上の血圧」は、夏に測ったグループより平均6.2mmHg高く、夜は4.6mmHg高い結果でした。朝の平均値は夏134.1mmHg・冬140.3mmHg、夜は夏126.7mmHg・冬131.3mmHgでした。 [12] この解析は、国内71施設の外来患者4,267人(平均約65歳、91.4%が高血圧)を対象としています。2005〜2012年の登録時に朝晩の家庭血圧を14日間測り、夏(6〜8月)の979人と冬(12〜2月)の1,004人を含む季節ごとのグループを比べました。 [12] ただし、同じ人の夏と冬を追いかけた比較ではありません。「自分も冬になれば必ず6.2mmHg上がる」という予測には使えず、住まいの温度や体調、治療などによって変わり方は異なります。季節の変化を知る手がかりとして、自分の朝と夜の記録を見ていきましょう。 [11] [12] 図1 夏と冬のグループ別にみた家庭の「上の血圧」の平均。J-HOP研究・表1の値をもとに作成。夏979人、冬1,004人。朝は6.2mmHg、夜は4.6mmHgの群間差。異なる参加者の比較であり、一人ひとりの季節変化を示すものではありません。 [12] 血圧計は上腕式を選び、腕帯のサイズを確認 家庭では、二の腕に腕帯(カフ)を巻く上腕式の血圧計が基本です。購入するときは、精度の検証情報が確認できる機種を選びましょう。日本高血圧学会のホームページでは、国内で販売される上腕式血圧計の試験結果が公開されています。なお、掲載は学会による特定機種の推奨を意味するものではありません。 [2] [3] 腕帯が腕に合っていないと、測定値に誤差が生じます。二の腕の周囲の長さが、機器に表示された対応範囲に入っているかを確認してください。巻き方や装着位置は、その機種の説明書に従います。選び方や使い方に迷うときは、医師や薬剤師に相談しましょう。 [4] 腕時計型など、腕帯を使わず血圧を推定する機器の値だけで、高血圧の診断や薬の調整を判断することは勧められていません。診療に使う記録は、上腕式の血圧計でそろえるのが基本です。 [5] 朝と夜の測り方をそろえましょう 測定姿勢のイメージ(AI生成イラスト)。背中を支え、足を組まず、腕を台にのせます。カフは素肌に巻き、心臓の高さに合わせましょう。 [4] [5] 朝は、起きて1時間以内に 起床後1時間以内に、トイレで排尿を済ませる 朝食を食べる前、朝の血圧の薬を飲む前に測る 椅子に座って1〜2分、静かに休んでから測定を始める 出典: [2] 測定のために、処方された薬を勝手に抜いたり、飲む時刻を変更したりしないでください。測り忘れて食事や服薬を済ませたときは、そのことを記録しておき、次からいつもの条件に戻しましょう。主治医から別の指示がある場合は、その指示を優先します。 [4] [5] 夜は、寝る前に 夜は就寝前に、椅子に座って1〜2分安静にしてから測ります。入浴や飲酒なども測定値に影響するため、できるだけ毎日同じ生活の流れで測り、普段と条件が違う日はメモを添えてください。別の時間帯の測定が必要かどうかは、主治医と相談しましょう。 [1] [2] [5] 姿勢と測定環境も毎回同じに 寒さを我慢せず、静かで落ち着ける室内で測る 椅子の背もたれに背中を預け、脚を組まず、足の裏を床につける 腕を机などで支え、腕帯の位置を心臓と同じ高さにする 腕帯は原則として素肌に巻く。厚い服の上から測ったり、まくった袖で腕を締めつけたりしない 測定中は話さず、体や腕を動かさない 出典: [1] [4] [5] 運動の直後や、喫煙・カフェインを含む飲み物を取った直後の測定は避けましょう。測定前の30分は、運動、喫煙、カフェイン摂取を控えることが勧められています。毎回同じ腕を使い、左右差が気になる場合は診察で確認してください。 [1] [4] 原則2回測り、平均を記録 朝も夜も、1回の機会に原則2回測定し、その平均を記録します。上の血圧同士、下の血圧同士をそれぞれ平均します。2回の測定値そのものも残し、高かった値だけを消したり、低い値が出るまで何度も測り続けたりしないようにしましょう。 [1] [2] 記録は数値と一言メモで十分です まずは1週間、朝と夜の記録を続けてみましょう。日本高血圧学会の一般向け資料では、週5日以上測った結果を主治医に見せることを勧めています。受診前だけでなく、普段からの変化が分かると役立ちます。必要な測定期間や頻度は、治療の状況に合わせて相談してください。 [2] [5] 日付と測った時刻(朝・夜を分ける) 1回目と2回目の上・下の血圧、それぞれの平均 血圧計に表示される脈拍 体調、飲み忘れ、睡眠不足、普段と違う測定条件などの一言メモ 出典: [1] [5] [8] 紙の血圧手帳、ノート、血圧計のメモリー、使い慣れたアプリなど、続けやすい方法を選びましょう。朝と夜を分けて確認できる形で残し、受診時には記録とお薬手帳を持参してください。気になる症状があるときや、血圧が非常に高いときは、記録が1週間そろうのを待つ必要はありません。 [4] [8] 記録のメモは「いつもより寒い部屋」「朝の薬を飲んだ後」「立ち上がるとふらつく」といった短い言葉で構いません。数値をきれいにそろえることより、実際の状態を伝えることを大切にしてください。 135/85と125/75は、意味が違います 家庭血圧の数字を見るときに、混同しやすいのが「高血圧を診断するための基準」と「治療で目指す目標」です。いずれも上と下の血圧を確認します。 [5] [6] 高血圧の診断に使う家庭血圧の基準 上が135以上、または下が85以上 mmHg 朝・夜それぞれの複数日平均をもとに、医師が診断します。診察室の基準は、上が140以上または下が90以上です。 [5] 治療中の原則的な家庭血圧の目標 上が125未満、かつ下が75未満 mmHg 日本高血圧学会の2025年ガイドラインが示す降圧目標です。診察室では130/80mmHg未満が原則です。 [6] したがって、125/75mmHgを超えた一度の測定だけで、高血圧と診断されたり、すぐ薬が必要と決まったりするわけではありません。一方で、135/85mmHg未満なら誰でも治療目標を達成している、という意味でもありません。自分の目標値を主治医と確認しましょう。 [5] [6] 目標は、下げたときの体調も確かめながら個別に決めます。高齢で日常生活の動作が低下している方、めまいや立ちくらみがある方などは、とくに慎重な調整が必要です。慢性腎臓病(CKD)の方も、原則的な目標を踏まえつつ、腎機能や電解質、ふらつきなどを確認しながら治療を進めます。 [5] [7] 妊娠中や透析治療中などは、この記事の目安だけで判断せず、担当医から指示された目標や測定方法を優先してください。 [5] [7] 秋のうちに、家の冷えやすい場所を見直す 血圧を測る場所だけでなく、居間からトイレ、脱衣所、浴室へ移動するときの温度差にも目を向けましょう。衣類や暖房を工夫し、外出時にはマフラーや手袋などで寒さへの備えを。朝の測定を続けやすいよう、血圧計と記録用のノートを同じ場所に置いておくのも一案です。 [1] 季節が変わって血圧が上がってきても、薬を自己判断で増やしたり、逆に血圧が落ち着いたからと中止したりしないでください。記録をもとに、主治医が体調やほかの病気との関係を確認して調整します。寒さ対策とあわせて、これまでの治療や生活習慣の改善を続けましょう。 [4] [11] 夏の塩分補給や熱中症対策については、関連記事「 夏の塩分補給は必要?高血圧の方の減塩と熱中症対策 」で詳しく解説しています。 血圧が高いとき、どう行動する? 急な症状があるときは119番へ 突然の胸や背中の強い痛み、息苦しさ、片側の手足の動かしにくさ、ろれつが回らない、意識がおかしい、急に見えにくくなった、といった症状がある場合は、血圧の数値にかかわらず119番へ連絡してください。血圧を何度も測り直したり、自然に下がるのを待ったりして、救急対応を遅らせないことが大切です。 [8] [9] 症状がなくても、非常に高い値が続くとき 上が180mmHg以上、または下が120mmHg以上などの非常に高い値が出たときは、症状がないことを確かめ、静かに座って少なくとも1分おいてから再測定してください。再び同じ程度に高い場合は、次の定期受診まで待たず、速やかに医療機関へ連絡して受診方法を相談しましょう。数値だけで救急車の必要性は決まりませんが、無症状でも放置しないでください。 [8] [9] 家庭で高い日が続くとき 家庭血圧の平均が上135mmHg以上または下85mmHg以上になる、治療中で自分の目標より高い日が続く、以前より数値が上がってきたといった場合は、記録を持って受診しましょう。低い値とともにふらつきなどが出る場合も、薬を自分で調整する前に相談してください。 [5] [7] 受診時には、処方薬だけでなく、市販薬、漢方薬、サプリメントの使用も伝えてください。新しく飲み始めたものがある場合は、血圧が変わった時期とあわせて確認する手がかりになります。 [8] よくあるご質問 1回だけ高い値が出ました。すぐに高血圧ですか? 1回の測定だけでは決まりません。症状がなければ姿勢や腕帯を確認し、落ち着いて再測定し、両方の値を残してください。ただし、非常に高い値が続く場合や急な症状がある場合は、上記の受診・救急の目安に従ってください。 [4] [8] [9] 病院では正常なのに、家では高いのはなぜですか? 診察室では高くなくても家庭では高くなる「仮面高血圧」の可能性があります。反対に、診察室で高く家庭では高くない場合もあります。測定方法も含めて確認するため、家庭での記録を医師に見せましょう。 [2] [5] 朝の測定を忘れた日は、薬を後回しにしてもよいですか? 測定のために、自己判断で薬を抜いたり服薬時刻を変更したりしないでください。飲んだ後に測った場合は、そのことを記録しておきます。処方された飲み方を守り、測定との順番に迷う場合は医師や薬剤師に確認しましょう。 [4] [5] 2回測ると数字が違います。低い方だけ書けばよいですか? 低い方だけを選ばず、2回とも記録して、それぞれの平均を残しましょう。血圧は変動するため、数値が違うことはあります。毎回大きく違う、測定エラーが続くといった場合は、血圧計の使い方も相談してください。 [1] [2] 高齢者や腎臓病のある人も、同じ目標まで下げるのですか? 原則的な目標を参考にしつつ、体調、日常生活の状態、腎機能、ふらつきなどを確認して個別に決めます。年齢や病名だけで自己判断せず、主治医と「自分が目指す家庭血圧」を共有してください。 [5] [7] 血圧の記録を、診察での相談に役立てましょう 守口市・門真市・寝屋川市で、健診の血圧や治療中の数値の変化が気になる方は、家庭で測った記録とお薬手帳をお持ちください。測り方やご自身の目標を確認していきましょう。 当院は守口市大久保町にあります。大日・古川橋・大和田・萱島周辺から受診される方も、 アクセス・診療時間 をご確認のうえお越しください。 当院の高血圧診療について Web予約 急な強い症状がある場合は、通常のWeb予約を待たず119番へ連絡してください。 この記事は成人の高血圧・家庭血圧についての一般的な情報です。個々の診断や治療は、診察と検査を踏まえて医師が判断します。処方や個別の指示がある方は、その内容を優先してください。 参考文献 出典確認日:2026年10月14日 国立循環器病研究センター:高血圧(病気について)。確認日:2026-10-14 https://www.ncvc.go.jp/hospital/pub/knowledge/disease/hypertension-2/ 日本高血圧学会:家庭で血圧を測定しましょう(一般向けパンフレット)。確認日:2026-10-14 https://www.jpnsh.jp/data/selfmonitoring.pdf 日本高血圧学会 学術委員会:血圧計に関する日本高血圧学会からの情報(2025年集計)(2025-12-25)。確認日:2026-10-14 https://www.jpnsh.jp/com_ac_wg1.html American Heart Association:Home Blood Pressure Monitoring。確認日:2026-10-14 https://www.heart.org/en/health-topics/high-blood-pressure/understanding-blood-pressure-readings/monitoring-your-blood-pressure-at-home 日本高血圧学会:The Japanese Society of Hypertension Guidelines for the management of elevated blood pressure and hypertension 2025 (JSH2025)。確認日:2026-10-14 https://www.nature.com/articles/s41440-025-02462-y 日本高血圧学会:「高血圧の日」について(JSH2025に基づく目標値)。確認日:2026-10-14 https://www.jpnsh.jp/general_0517.html 日本腎臓学会:慢性腎臓病(CKD)患者の血圧管理に関するステートメント(2026-06-25)。確認日:2026-10-14 https://cdn.jsn.or.jp/data/253-258.pdf 厚生労働省/医薬品医療機器総合機構(PMDA):重篤副作用疾患別対応マニュアル 重症高血圧(令和5年12月)(2023-12)。確認日:2026-10-14 https://www.pmda.go.jp/files/000265668.pdf American Heart Association:When To Call 911 About High Blood Pressure。確認日:2026-10-14 https://www.heart.org/en/health-topics/high-blood-pressure/understanding-blood-pressure-readings/when-to-call-911-for-high-blood-pressure 日本高血圧学会:高血圧の10のファクト ~国民の皆さんへ~。確認日:2026-10-14 https://www.jpnsh.jp/10_facts.html 日本高血圧学会:The Japanese Society of Hypertension Practical Consensus Guidelines for Seasonal Blood Pressure Management(2026-10-10)。確認日:2026-10-14 https://www.nature.com/articles/s41440-026-02826-y Narita K, et al.:Seasonal Variation of Home Blood Pressure and Its Association With Target Organ Damage: The J-HOP Study (Japan Morning Surge-Home Blood Pressure)(2020-03-23)。確認日:2026-10-14 https://academic.oup.com/ajh/article/33/7/620/5811009