健診で尿蛋白や尿潜血を指摘されても、「+が付いたから腎臓病」「次に-になったから問題なし」とは言い切れません。大切なのは、尿の濃さに左右される検査なのか、たんぱく質の量を調べる検査なのかを区別し、必要に応じて尿の中の成分まで確認することです。 検査は病状に応じて選びます。 [1] [3] 尿定性は、異常を見つけるための入口 健診でよく使う試験紙による尿検査(尿定性)のうち、尿蛋白の項目は主にアルブミンというたんぱく質に反応し、その濃度を「-」「±」「1+」などで示します。1日に漏れているたんぱく質の総量を、そのまま測っているわけではありません。 [1] [2] 例えば、同じ量のたんぱく質が尿に出ていても、尿の水分が少なければ濃く、多ければ薄くなります。そのため、濃い尿では+が出やすく、薄い尿では少なく見えることがあります。「1+から±になった」という変化だけで、改善したとは判断できないのです。結果をよく見せようとして、採尿前に水を大量に飲む必要はありません。 さらに、結果が実際の状態を正しく反映しないこともあります。 偽陰性(異常があっても-になる):尿が薄い場合や、試験紙が反応しにくいたんぱく質が出ている場合など。少量のアルブミンも、通常の尿蛋白試験紙では捉えにくいことがあります。 偽陽性(たんぱく質以外の影響で+になる):尿が強くアルカリ性に傾いている場合や、採尿容器に一部の洗剤・消毒剤が残っている場合など。 [1] [2] [5] なお、運動後や発熱時に一時的にたんぱく質が出ることは、検査の誤反応とは別です。尿定性は有用な入口ですが、+・-だけで結論を出さず確認します。 [3] 定量検査で「どのくらい漏れているか」を確認 尿蛋白が陽性の場合などは、尿蛋白の定量を検討します。代表的なのが「尿蛋白/クレアチニン比(尿蛋白Cr比)」です。同じ尿に含まれるクレアチニンも測り、尿の濃さの影響を補正して評価します。 [1] 例えば、どちらも「尿蛋白1+」だった2人でも、尿の濃さが違えば、実際に漏れている量の評価は同じとは限りません。定量値は、詳しい検査が必要か、治療後にどう変化したかを判断する材料になります。ただし、この比にも筋肉量などの影響があるため、必要に応じて繰り返し測定や蓄尿検査を組み合わせます。 糖尿病のある方などでは、病状や検査の適応に応じて「尿アルブミン定量(尿アルブミン/Cr比)」を選びます。一般的な尿蛋白の試験紙では捉えにくい、少量のアルブミンを調べる目的があります。全員に両方の定量検査が必要というわけではありません。 [1] 尿沈渣で「何が混じっているか」を確認 尿潜血や蛋白尿の原因を考える際には、尿沈渣(にょうちんさ)も役立ちます。尿中の成分を顕微鏡などで調べ、赤血球・白血球・円柱などを確認する検査です。 [3] 例えば「尿潜血+」でも、赤血球が実際にあるか、その形が変わっていないかで、考える原因が変わります。形の変わった赤血球や赤血球を含む円柱は、腎臓のフィルターである糸球体の病気を考える手がかりになります。円柱とは、腎臓の細い管の中でできる筒状の成分です。円柱には健康な方にも見られる種類があり、「円柱あり」だけで腎炎とは決まりません。 [3] [4] こうした所見を、蛋白尿の量、症状、採血、必要に応じた画像検査などと合わせて考えます。沈渣だけで病名が確定したり、赤血球に変形がなければ腎臓の病気を完全に除外できたりするわけではありません。 eGFRと過去の結果も合わせて判断します eGFRは、採血から腎臓のろ過する働きを推定する指標です。尿検査とは見ているものが違うため、eGFRが保たれていても蛋白尿の確認は大切です。反対に、eGFRが一度低かっただけでCKDとは確定しません。異常が続いているか、以前からどう変化したかも確認します。 [1] 健診で尿蛋白1+以上、尿蛋白と尿潜血の両方が陽性、腎機能低下などを指摘された方は、結果を持ってご相談ください。CKDの診断には慢性的に続くことの確認が必要ですが、受診を3か月待つという意味ではありません。 [1] 今回と過去の健診結果、お薬手帳があると判断に役立ちます。検査は結果と病状に応じて選び、全員にすべてを一度に行うものではありません。強い息苦しさや意識の異常がある場合は、通常の予約を待たず救急対応を求めてください。 大日てらしまクリニックでは、健診の尿検査・腎機能についてご相談いただけます。古川橋方面からの道順は、 アクセス・診療時間 をご確認ください。 健診結果について相談する・Web予約 参考文献 日本腎臓学会編.CKD診療ガイド2024.東京医学社.学会公開第5刷、第1章(尿検査の評価:p.7)。 https://cdn.jsn.or.jp/medic/guideline/pdf/guide/viewer.html?file=1-178_v3.pdf 日本腎臓学会.検尿の考え方・進め方.第2章「検尿の方法」。 https://en.jsn.or.jp/medic/academicinfo/sbook/09.php 日本腎臓学会.一般のみなさまへ「腎臓検診でわかること」。 https://jsn.or.jp/general/kidneydisease/symptoms02.php 日本臨床衛生検査技師会 尿沈渣特集号編集部会.尿沈渣アトラス:IV 円柱類.医学検査.2017;66(J-STAGE-1). https://www.jstage.jst.go.jp/article/jamt/66/J-STAGE-1/66_17J1-3iv/_html/-char/ja/ 栄研化学.ウロペーパーⅢ 電子添文.2024年11月改訂、第8版.「操作上の注意:蛋白質」。 https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/ivdDetail/ResultDataSetPDF/170005_21600AMZ00655000_E_02_02 CKDの診断と受診勧奨についての補足資料:日本腎臓学会編.エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023.第1章。 https://jsn.or.jp/data/gl2023_ckd_ch01.pdf [6] 資料確認日:2026年10月21日。